摩訶般若波羅蜜経習応品第三
二、菩薩の智慧の抜きんでることを説く
| 譬如滿閻浮提竹麻稻茅。諸比丘其數如是。 智慧如舍利弗目ノ連等。欲比菩薩行般若波羅蜜智慧百分不及一。千分百千億分乃至算數譬喻所不能及。 何以故。 菩薩摩訶薩用智慧度脫一切眾生故。 |
譬えば閻浮提(ジャンブ樹の生える+ドゥヴィーパ:大陸)に満ちている竹・麻・稲・茅のように、諸々の出家者の数もこのように〈多く〉、 智慧は舎利弗(最賢者とされるブッダ十大弟子の一人)・目ノ連(マウドガリャーヤナ、神通第一とされるブッダ十大弟子の一人)等のようであったとしても、般若波羅蜜を行ずる菩薩の智慧と比べれば、百分の一にも及ばず、千分、百千億(億=十万)分、いや数の計算などで譬えることはできないのである。 なぜであろうか。 菩薩摩訶薩は智慧を用いて一切の衆生を世俗の迷いから救い上げるからである。 |
| 舍利弗。置滿閻浮提如舍利弗目ノ連等。 若滿三千大千國土如舍利弗目ノ連等。復置是事。 若滿十方如恒河沙等國土。如舍利弗目ノ連等智慧。欲比菩薩行般若波羅蜜智慧。百分不及一。千分百千億分。乃至算數譬喻所不能及。 |
舎利弗、閻浮提の隅々まで舎利弗・目ノ連等のようなものたちが、満たされていると考えてみるがよい。 |
| 復次舍利弗。菩薩摩訶薩行般若波羅蜜。一日修智慧。出過一切聲聞辟支佛上。 | また次に舎利弗、菩薩摩訶薩が般若波羅蜜を行じて、一日でも智慧を修得すれば、一切の声聞・辟支仏の上に抜きん出るのである」 |
| 舍利弗白佛言。 世尊。聲聞所有智慧。 若須陀洹斯陀含阿那含阿羅漢辟支佛智慧佛智慧。 是諸眾智無有差別。 不相違背無生性空。 若法不相違背無生性空。 是法無有別異。 云何世尊言菩薩摩訶薩行般若波羅蜜一日修智慧出過聲聞辟支佛上。 |
舎利弗が、仏に申し上げた。 「世尊。声聞のもつ智慧、 もしくは須陀洹・斯陀含・阿那含・阿羅漢・辟支仏の智慧・仏の智慧、 これら諸々の多くの智には差別がなく、 互いに背くこともなく、生ずることもなく本性は空であり、 もしくは事物が互いに背くこともなく、生ずることもなく本性は空であって、 この事物に別異がないのであれば、 なぜ世尊、菩薩摩訶薩が般若波羅蜜を行じ、一日でも智慧を修得すると、声聞・辟支仏の上に抜きん出ることができるのでしょうか」 |
| 佛告舍利弗。 於汝意云何。 菩薩摩訶薩行般若波羅蜜一日修智慧。心念 我行道慧益一切眾生。 當以一切種智知一切法。 度一切眾生。 諸聲聞辟支佛智慧。為有是事不。 |
仏は舎利弗に次のように説いた。 「汝はどう思うか。 菩薩摩訶薩が般若波羅蜜を行じて、一日でも智慧を修得し、心に 『私は道慧(衆生を仏道に導く智慧)を修行して、一切の衆生に対し利益を与えよう』 と思い、 まさに一切種智(一切空ゆえに平等・無差別を知りつつ現象諸相の種別を見極める智慧)によって一切の事物を知り、 一切の衆生を救うべきである。 諸々の声聞・辟支仏の智慧には、このような事があるといえるであろうか」 |
| 舍利弗言。 不也世尊。 舍利弗。於汝意云何。諸聲聞辟支佛頗有是念。 我等當得阿耨多羅三藐三菩提度一切眾生。令得無餘涅槃 不。 |
舎利弗が言った。 「ありません、世尊」 「舎利弗、汝はどう思うか。 諸々の声聞・辟支仏は、とりわけ 『我等は、まさに阿耨多羅三藐三菩提を得て一切の衆生を救い、〈煩悩と、それの宿る身体の〉さらに余すもののない涅槃(すべての精神的かつ肉体的な解脱の総合状態)を得させるべきである』 と思うことがあるかどうか」 |
| 舍利弗言。 不也世尊。 佛告舍利弗。 以是因緣故。當知諸聲聞辟支佛智慧。欲比菩薩摩訶薩智慧。百分不及一千分百千億分。乃至算數譬喻所不能及。 |
舎利弗が言った。 「ありません、世尊」 仏は舎利弗に次のように説いた。 「この因縁(内因と外縁)によって、まさに諸々の声聞・辟支仏の智慧を知り、菩薩の般若波羅蜜を行ずる智慧と比べれば、百分の一にも及ばず、千分、百千億分、いや数の計算などで譬えることはできないのである。 |
| 舍利弗。於汝意云何。 諸聲聞辟支佛頗有是念。 我行六波羅蜜成就眾生莊嚴國土。具佛十力四無所畏四無閡智十八不共法。度脫無量阿僧祇眾生。令得涅槃 不。 |
舎利弗、汝はどう思うか。 諸々の声聞・辟支仏は、とりわけ 『私は六つの波羅蜜を修行し、衆生を救い上げ、国土を荘厳し、仏のもつ十の力・四つの畏れのない心境の形式・四つの妨げられることのない智・十八の〈仏以外には〉具わらない事物を獲得させ、数えることもできない阿僧祇ほどの衆生を救い上げ、涅槃を得させよう』 と思うことがあるかどうか」 |
| 舍利弗言。 不也世尊。 佛告舍利弗。 菩薩摩訶薩能作是念。 我當行六波羅蜜乃至十八不共法。成阿耨多羅三藐三菩提。度脫無量阿僧祇眾生令得涅槃。 |
舎利弗が言った。 「ありません、世尊」 仏は舎利弗に次のように説いた。 「菩薩摩訶薩は次のように思うことができるのである。 『私は、まさに六つの波羅蜜あるいは十八の〈仏以外には〉具わらない事物を修行し、阿耨多羅三藐三菩提を完成し、数えることもできない阿僧祇ほどの衆生を救い上げ、涅槃を得させよう』 |
| 譬如螢火蟲不作是念。 我力能照閻浮提普令大明。 諸阿羅漢辟支佛亦如是不作是念。 我等行六波羅蜜乃至十八不共法。得阿耨多羅三藐三菩提。度脫無量阿僧祇眾生令得涅槃。 |
譬えばほたるは、 『私の力によって閻浮提を照らし、遍く昼間のように明るくしよう』 というような考えを起こさないのと同じように、諸々の阿羅漢・辟支仏もまた、 『私たちは六つの波羅蜜あるいは十八の〈仏以外には〉具わらない事物を修行し、阿耨多羅三藐三菩提を完成し、数えることもできない阿僧祇ほどの衆生を救い上げ、涅槃を得させよう』 というような考えを起こさないのである」 |
| 舍利弗。譬如日出時。光明遍照閻浮提。無不蒙明者。 菩薩摩訶薩亦如是。行六波羅蜜乃至十八不共法。得阿耨多羅三藐三菩提。度脫無量阿僧祇眾生令得涅槃。 |
舎利弗、譬えば日の出の時のように、光明は遍く閻浮提を照らし、明かりを蒙むらない者はいないのである。 菩薩摩訶薩もまたこのように、六つの波羅蜜あるいは十八の〈仏以外には〉具わらない事物を修行し、阿耨多羅三藐三菩提を得て、数えることもできない阿僧祇ほどの衆生を救い上げるである」 |
著作 アルキメデスの館