一、ブッダ、諸々の菩薩の来生と往生の因縁を説く
| 舍利弗白佛言。 世尊。菩薩摩訶薩行般若波羅蜜。能如是習相應者。從何處終來生此間。從此間終當生何處。 |
舎利弗が仏に申し上げた。 「世尊。菩薩摩訶薩(ボーディサットヴァ:覚りを求める衆生+マハーサットヴァ:偉大な衆生)が般若波羅蜜(プラジニャー:智慧+パーラミター:到彼岸、智慧の超越)を行じ、このように相応に習うことができるということは、何処で終わってこの世間に来生し、またこの世間で終わったのち何処に生まれるのでしょうか」 |
| 佛告舍利弗。 是菩薩摩訶薩行般若波羅蜜能如是習相應者。 或從他方佛國。來生此間。 或從兜率天上來生此間。 或從人道中來生此間。 |
仏は舎利弗に次のように説いた。 「この菩薩摩訶薩、般若波羅蜜を行じ、このように相応に習うことができる者は、 あるものは他方の仏のいる世界からこの世間に来生し、 あるものは兜率天(トゥシタ:上足・喜足・知足、欲界の第四天)上からこの世間に来生し、 あるものは人間世界の中からこの世間に来生したのである。 |
| 舍利弗。從他方佛國來者。疾與般若波羅蜜相應。與般若波羅蜜相應故。捨身來生此間。諸深妙法皆現在前。 後還與般若波羅蜜相應。在所生處常値諸佛。 |
舎利弗、他方の仏のいる世界から来る者は、速やかに般若波羅蜜と相応し、般若波羅蜜と相応するから、身体を捨ててこの世間に来生し、諸々の深妙の法すべてを目の当たりにする。 その後ふたたび般若波羅蜜と相応し、生まれ変わる処で常に諸々の仏に出会うのである。 |
| 舍利弗。有一生補處菩薩。兜率天上終來生是間。 是菩薩不失六波羅蜜。隨所生處。一切陀羅尼門諸三昧門。疾現在前。 |
舎利弗、ある菩薩はあと一生で仏滅後を補う処におり、兜率天上に終わりこの世間に来生するであろう。 この菩薩は六波羅蜜を失わず、生まれ変わる処の状況に随って、一切の陀羅尼(ダーラニー:真理を護持する力)門・諸々の三昧(サマーディー:心を集中して諸事を正しく見る力)門を、速やかに目の当たりにするであろう。 |
| 舍利弗。有菩薩人中命終還生人中者。除阿惟越致。 是菩薩根鈍不能疾與般若波羅蜜相應。諸陀羅尼門諸三昧門。不能疾現在前。 |
舎利弗、ある菩薩は人間世界の中で命を終え、再び人間世界の中に生まれるが、阿惟越致(アヴァィヴァルティ:菩薩の不退転の位)にいるものを除く。 この菩薩の根は鈍なので、速やかに般若波羅蜜と相応することはできず、諸々の陀羅尼門・諸々の三昧門を、速やかに目の当たりにすることはできないのである。 |
| 舍利弗。汝所問菩薩摩訶薩。與般若波羅蜜相應。從此間終當生何處者。 | 舎利弗、汝の問うている菩薩摩訶薩は、般若波羅蜜と相応し、この世間で終わり、まさに何処に生まれるのであろうか。 |
| 舍利弗。此菩薩摩訶薩。從一佛國至一佛國。常値諸佛終不離諸佛。 | 舎利弗、この菩薩摩訶薩は、ある仏のいる世界から別の仏のいる世界へと至り、常に諸々の仏に出会い、ついに諸々の仏から離れないであろう。 |
| 舍利弗。有菩薩摩訶薩不以方便入初禪乃至第四禪。亦行六波羅蜜。 是菩薩摩訶薩得禪故生長壽天。隨彼壽終來生是間。得(SAT版有「。」)人身値遇諸佛。 是菩薩諸根不利。 |
舎利弗、ある菩薩摩訶薩は、方便(衆生引導の仮の手段)を用いないで初禅〈天〉から第四禅〈天〉(色界:物質的執着のある世界)に入り、また六波羅蜜を行ずる。 この菩薩摩訶薩は禅を得るから長寿天(仏に会えない八難処の一)に生まれかわり、そこでの寿命が終わってからこの世間に来生し、人の身体を得て諸々の仏に出会うであろう。 この菩薩の諸々の根は鋭利とはいえない。 |
| 舍利弗。有菩薩摩訶薩入初禪乃至第四禪。亦行般若波羅蜜。不以方便故捨諸禪生欲界。 是菩薩諸根亦鈍。 |
舎利弗、ある菩薩摩訶薩は、初禅〈天〉から第四禅〈天〉に入り、また般若波羅蜜を行ずるが、方便を用いないために諸々の禅〈天〉を捨てて欲界に生まれかわることになるであろう。 この菩薩の諸々の根は、また鈍なのである。 |
| 舍利弗。有菩薩摩訶薩。 入初禪乃至第四禪。 入慈心乃至捨。 入虛空處乃至非有想非無想處。 修四念處乃至八聖道分。行佛十力乃至大慈大悲。 是菩薩用方便力不隨禪生。不隨無量心生。不隨四無色定生。在所有佛處於中生。常不離般若波羅蜜行。 如是菩薩賢劫中當得阿耨多羅三藐三菩提。 |
舎利弗、ある菩薩摩訶薩は、初禅〈天〉から第四禅〈天〉に入り、 慈心から捨(慈・悲・喜・捨:四つの限りのない心)に入り、 虚空処から非有想非無想処(無色界:物質的執着から解脱した世界)に入り、 四つの観行(身念処・受念処・心念処・法念処)から八つの正しい道(三十七道品:覚りのための三十七の徳目)を修し、仏のもつ十の力から大慈大悲を行ずる。 この菩薩は方便力を用い、禅〈天の果〉に随って生まれず、限りのない心〈の果〉に随って生まれず、四つの物質的存在の無いことの瞑想(空無辺処・識無辺処・無所有処・非想非非想処)〈の果〉に随って生まれず、あらゆる仏のいる処に生まれかわり、常に般若波羅蜜行を離れない。 この菩薩は賢れる(千人ものブッダの存在する)現世の中にまさに阿耨多羅三藐三菩提(アヌッタラサムャクサンボーディ、最上にして普遍的の覚り)を得るであろう。 |
| 舍利弗。有菩薩摩訶薩 入初禪乃至第四禪。 入慈心乃至捨。 入虛空處乃至非有想非無想處。 以方便力故。不隨禪生 還生欲界。若刹利大姓婆羅門大姓居士大家生(生字誤記ならん)。爲成就眾生故。 |
舎利弗、ある菩薩摩訶薩は、 初禅〈天〉から第四禅〈天〉の行に入り、 慈心から捨に入り、虚空処から非有想非無想処に入る。 方便力を使うことによるから禅〈天の果〉に随って生まれることはなく、 反対に欲界、もしくは刹利の家系・婆羅門の家系・在家信徒の大家に生まれ、 衆生を成就するであろう。 |
| 舍利弗。有菩薩摩訶薩 入初禪乃至第四禪。 入慈心乃至捨 入虛空處乃至非有想非無想處。 以方便力故。不隨禪生 或生四天王天處。 或生三十三天。夜摩天兜率陀天化樂天他化自在天。 於是中成就眾生亦淨佛土。常値諸佛。 |
舎利弗、ある菩薩摩訶薩は、 |
| 舍利弗。有菩薩摩訶薩行般若波羅蜜。 以方便力故入初禪。 此間命終生梵天處作大梵王。 從梵天處遊一佛國。 至一佛國。 在所有諸佛得阿耨多羅三藐三菩提。未轉法輪者勸請令轉。 |
舎利弗、ある菩薩摩訶薩は、般若波羅蜜を行じ、 方便力を使うことによるから初禅〈天〉に入り、 この世間で命を終えて、梵天処に生まれ大梵王となり、 梵天処からある仏のいる世界に遊び、 ある仏のいる世界に至るのである。 あらゆる諸々の仏が阿耨多羅三藐三菩提を得て、未だ法輪を転じない者に対しては勧請して転じさせるであろう。 |
| 舍利弗。有菩薩摩訶薩一生補處行般若波羅蜜。 以方便力故入初禪乃至第四禪。 入慈心乃至捨。 入虛空處乃至非有想非無想處。修四念處乃至八聖道分。 入空三昧無相無作三昧。 不隨禪生。生有佛處修梵行。 若生兜率天上隨其壽終。具足善根不失正念。 與無數百千億萬(百千萬億ならん)諸天。圍繞恭敬來生此間。得阿耨多羅三藐三菩提。 |
舎利弗、ある菩薩摩訶薩は、〈仏滅後を〉補う所にあって般若波羅蜜を行じ、 方便力を使うことによるから初禅〈天〉から第四禅〈天〉に入り、 慈心から捨に入り、 虚空処から非有想非無想処に入り、四つの観行から八つの正しい道を修し、 空三昧・無相・無作三昧(三三昧)に入り、禅〈天の果〉に随って生まれず、仏のいる処に生まれ断欲を修行し、 もしくは兜率天上に生まれ、その寿命に随って終わり、善根を具足し正しい考えを失わない。 無数の百・千・万・億(億=十万)の諸々の天王が周りを取り囲み、恭敬し、この世界に来生し、阿耨多羅三藐三菩提を得たことを自覚するであろう。 |
| 復次舍利弗。有菩薩摩訶薩得六神通。 不生欲界色界無色界。從一佛國至一(SAT版無一字)佛國。 供養恭敬尊重讚歎諸佛。 |
また次に舎利弗、ある菩薩摩訶薩は、六神通を得て、 欲界・色界・無色界(三界)に生まれず、ある仏のいる世界からある仏のいる世界へと至り、 諸々の仏を供養・恭敬・尊重・讚歎するであろう。 |
| 舍利弗。有菩薩摩訶薩遊戲神通。 從一佛國至一佛國。所至到處無有聲聞辟支佛乘。乃至無二(SAT版無二字)乘之名。 |
舎利弗、ある菩薩摩訶薩は、神通に遊戯し、 ある仏のいる世界からある仏のいる世界に至り、到達するところすべてに声聞・辟支仏乗のあることもなく、さらにこれら二乗という名までもないのである。 |
| 舍利弗。有菩薩摩訶薩遊戲神通。 從一(SAT版無一字)佛國至一佛國。所至到處其壽無量。 |
舎利弗、ある菩薩摩訶薩は、神通に遊戯し、 ある仏のいる世界からある仏のいる世界に至り、到達するところすべてにおいて、その寿命は無量である。 |
| 舍利弗。有菩薩摩訶薩遊戲神通。 從一國土至一國土。所至到處有無佛法僧處。讚佛法僧功コ。 諸眾生用聞佛名法名僧名故。於此命終生諸佛前。 |
舎利弗、ある菩薩摩訶薩は、神通に遊戯し、 ある仏のいる世界からある仏のいる世界に至り、到達するところすべてに、仏・仏の教え・教団(三宝)のない処があるならば、仏・仏の教え・教団の功コを讚ずるであろう。 諸々の衆生は仏の名・仏の教えの名・教団の名を聞くことによって、この世の命を終えたのち、諸々の仏の前に生まれるであろう。 |
| 舍利弗。有菩薩摩訶薩初發意時 得初禪乃至第四禪。 得四無量心。 得四無色定。 修(得ならん)四念處乃至十八不共法。 是菩薩不生欲界色界無色界中。常生有益眾生之處。 |
舎利弗、ある菩薩摩訶薩は、最初に覚りへ発意したとき、 初禅〈天〉乃至第四禅〈天〉の境地を得、 四つの限りのない心を得、 四つの物質的存在の無いことの瞑想を得、 四つの観行から十八の〈仏以外には〉具わらない事物を得る。 この菩薩は欲界・色界・無色界中に生まれず、常に衆生を益することのある処に生まれるであろう。 |
| 舍利弗。有菩薩摩訶薩初發意時行六波羅蜜。 上菩薩位得阿惟越致地。 |
舎利弗、ある菩薩摩訶薩は、最初に覚りへ発意したとき
六波羅蜜を行じ、 菩薩の位に上り阿惟越致の境地を得るであろう。 |
| 舍利弗。有菩薩摩訶薩初發意時。 便得阿耨多羅三藐三菩提轉法輪。 與無量阿僧祇眾生作益厚。已入無餘涅槃。 是佛般涅槃後。餘法若住一劫若減一劫。 |
舎利弗、ある菩薩摩訶薩は、最初に覚りへ発意したとき、 そのまま阿耨多羅三藐三菩提を得て法輪を転じ、 無量阿僧祇の衆生を厚く益し、そののちさらに余すもののない涅槃(すべての精神的かつ肉体的な解脱の総合状態)に入る。 この仏の般涅槃の後に残る教えは、一劫のあいだ留まり、もしくは一劫を減ずるであろう。 |
| 舍利弗。有菩薩摩訶薩初發意時與般若波羅蜜相應。 與無數百千億菩薩。從一佛國至一佛國。爲淨佛國土故。 |
舎利弗、ある菩薩摩訶薩は、最初に覚りへ発意したとき、般若波羅蜜と相応し、 無数の百・千・億もの菩薩と、ある仏のいる世界からある仏のいる世界へと至り、仏のいる世界を浄めるであろう。 |
| 舍利弗。有菩薩摩訶薩行般若波羅蜜時。 得四禪四無量心。四無色定。遊戲其中入初禪。 從初禪起入滅盡定。 從滅盡定起乃至入四禪。 後(從ならん)四禪起入滅盡定。 從滅盡定起入虛空處。 從虛空處起入滅盡定。 從滅盡定起乃至入非有想非無想處。 從非有想非無想處起入滅盡定。 |
舎利弗、ある菩薩摩訶薩は、般若波羅蜜を行ずる時、 四つの禅・四つの限りのない心・四つの物質的存在の無いことの瞑想を得て、その中に遊戯し、初禅〈天〉に入り、 初禅から起って滅尽定(煩悩を滅し尽くした瞑想)に入り、 滅尽定から起ってから四禅〈天〉に入り、 四禅〈天〉から起って滅尽定に入り、 滅尽定から起って虚空処に入り、 虚空処から起って滅尽定に入り、 滅尽定から起ってさらに非有想非無想処にまで入り、 非有想非無想処から起って滅尽定に入る。 |
| 如是舍利弗。菩薩摩訶薩行般若波羅蜜。以方便力故入超越定。 | このように舎利弗、菩薩摩訶薩は般若波羅蜜を行じ、方便力を使うことによって超越定に入るのである。 |
| 舍利弗。有菩薩摩訶薩行般若波羅蜜時。 修四念處乃至十八不共法。 不取須陀洹果斯陀含果阿那含果阿羅漢果辟支佛道。 以方便力爲度眾生故。 起八聖道分。 以是八聖道分令得須陀洹果乃至辟支佛道。 |
舎利弗、ある菩薩摩訶薩は、般若波羅蜜を行ずる時、 四つの観行から十八の〈仏以外には〉具わらない事物を修し、 須陀洹(スロータアーパンナ、小乗仏教修行の第一の階梯)の果・斯陀含(サクリダーガーミー、第二の階梯)の果・阿那含(アナーガーミー、第三の階梯)の果・阿羅漢(アルハン、小乗仏教修行者の最高位)の果・辟支仏道を取らず、 方便力を使うことによって衆生を救い上げることを為すから、 八つの正しい道を起こし、 この八つの正しい道によって須陀洹果から辟支仏道を得させるのである」 |
著作 アルキメデスの館