宋本摩訶般若波羅蜜経出到品第二十一
一、ブッダ、大乗として出て到り留まるものはないことを説く(一)
| 佛告須菩提。 汝所問是乘何處出至何處住者。 佛言。 是乘從三界中出。至薩婆若中住。以不二法故。 |
仏は須菩提に次のように説いた。 「汝は、この乗〈りもの〉はどこから出てどこに到って留まるのかと質問した」(問乗品第十八参照) 仏がいった。 「この乗は三界の中から出て、薩婆若(サルヴァジュニャーナ、一切智)の中に留まり到る。二つに分けられない理法によるからである。 |
| 何以故。 摩訶衍薩婆若。是二法俱不合不散無色無形。無對一相。所謂無相。 |
どうしてであろうか。 摩訶衍(マハーヤーナ、大乗)と薩婆若がこの二つの理法であり、合せず散ぜず、物質的存在はなく形もなく、対するものもなく一つの姿かたちである。いわゆる姿かたちがないのである。 |
| 若人欲出無相法。為欲出實際。 | もしも人が、姿かたちのない事物を出させようと欲するならば、〈諸々の事物の〉究極的な真実を出させようと欲しているというのである。 |
| 若欲出無相法。為欲出如法性不可思議性。 | もしも姿かたちのない事物を出させようと欲するならば、〈諸々の事物の〉〈固有の〉本性・思いはかることができない究極的な真実の如きを出させようと欲しているというのである。 |
| 若欲出無相法。為欲出色空。為欲出受想行識空。 | もしも人が、姿かたちのない事物を出させようと欲するならば、物質的存在が空であることを出させようと欲しているというのであり、感覚・知覚・意志・意識が空であることを出させようと欲しているというのである。 |
| 何以故。 須菩提。色空相不出三界。亦不住薩婆若。 |
どうしてであろうか。 須菩提。物質的存在は空という姿かたちであり三界から出ない、また薩婆若に留まらない。 |
| 受想行識空相不出三界。亦不住薩婆若。 | 感覚・知覚・意志・意識は空姿かたちにして三界から出ない、また薩婆若に留まらない。 |
| 所以者何。 色色相空。受想行識識相空故。 |
何がその理由であろうか。 物質的存在・物質的存在の姿かたちが空であり、感覚・知覚・意志・意識・〈感覚・知覚・意志・〉意識の姿かたちが空であるからである。 |
| 若欲出無相法。為欲出眼空。 為欲出耳鼻舌身意空。 | もしも姿かたちのない事物を出させようと欲するならば、眼が空であることを出させようと欲するというのであり、 耳・鼻・舌・身体・心が空であることであることを出させようと欲するいうのであり、 |
| 為欲出乃至眼觸因緣生受空。耳鼻舌身意觸因緣生受空。 | さらに眼と外界との接触により生じる判断が空であること、耳・鼻・舌・身体・心と外界との接触により生じる判断が空であることを出させようと欲しているというのである。 |
| 何以故。 須菩提。眼空不出三界。亦不住薩婆若。乃至意觸因緣生受空。不出三界。亦不住薩婆若。 |
どうしてであろうか。 須菩提。眼は空であり三界から出ない、また薩婆若に留まらない、さらに心と外界との接触により生じる判断は空であり三界から出ない、また薩婆若に留まらない。 |
| 所以者何。 眼眼相空。乃至意觸因緣生受。意觸因緣生受相空故。 |
何がその理由であろうか。 眼・眼の姿かたちが空、さらに心と外界との接触により生じる判断、心と外界との接触により生じる判断の姿かたちが空であるからである。 |
| 若欲出無相法。為欲出夢。為欲出幻焰響影佛所化。 | もしも姿かたちのない事物を出させようと欲するならば、夢を出させようと欲しているというのである。幻・陽炎・響・影は仏の変化であることを出させようと欲しているというのである。 |
| 何以故。 須菩提。夢相不出三界。亦不住薩婆若。幻焰響影化相不出三界。亦不住薩婆若。 |
どうしてであろうか。 須菩提。夢の姿かたちは三界から出ない、また薩婆若に留まらない。幻・陽炎・響・影という変化の姿かたちは、また三界から出ず、また薩婆若に留まらない。 |
| 須菩提。若欲出無相法。為欲出檀那波羅蜜。 | 須菩提。もしも姿かたちのない事物を出させようと欲するならば、檀那(ダーナ、布施)波羅蜜(パーラミター、到彼岸、超越)を出させようと欲しているというのである。 |
| 若欲出無相法。為欲出尸羅波羅蜜羼提波羅蜜毘梨耶波羅蜜禪那波羅蜜般若波羅蜜。 | もしも姿かたちのない事物を出させようと欲するならば、尸羅(シーラ、持戒)波羅蜜・羼提(クシャーンティ、忍辱)波羅蜜・毘梨耶(ヴィーリャ、精進)波羅蜜・禅那(ディヤーナ、三昧)波羅蜜・般若(プラジニャー、智慧)波羅蜜を出させようと欲しているというのである。 |
| 何以故。 檀那波羅蜜相。不出三界。亦不住薩婆若。尸羅波羅蜜乃至般若波羅蜜。不出三界。亦不住薩婆若。 |
どうしてであろうか。 檀那波羅蜜の姿かたちは三界から出ない、また薩婆若に留まらない。尸羅波羅蜜さらに般若波羅蜜は三界から出ない、また薩婆若に留まらない。 |
| 何以故。 檀那波羅蜜檀那波羅蜜性空。 尸羅波羅蜜羼提波羅蜜毘梨耶波羅蜜禪那波羅蜜般若波羅蜜。般若波羅蜜性空。 |
どうしてであろうか。 檀那波羅蜜における檀那波羅蜜の姿かたちは空であり、 尸羅波羅蜜・羼提波羅蜜・毘梨耶波羅蜜・禅那波羅蜜・般若波羅蜜における般若波羅蜜の姿かたちは空であるからである。 |
著作 アルキメデスの館